「おてらの人」齋藤優華さん

今回は、南砺市本町(旧井波町)にある真教寺の坊守、齊藤優華さんにインタビューしました。

齊藤優華さんは現在、真教寺の坊守として活動される一方で、「寺子こどもえん(保育園)」、「寺子クラブ(学童保育)」を創設、主宰され、大変お忙しく、生き生きと過ごしておられます。

【質問】
優華さんが、寺子の活動を始めたきっかけは?

【優華さん】
近所に、当時は児童館もなく、共働きで居場所がなくて困っている子供さん達がいたことがきっかけでした。最初は、小学生が対象で、家庭では出来ない体験を、ということで始めましたが、より色んな人と子供たちが関われる場所にという願いや働きかけもあり、地域の方々、専門的な知識を持った方々が自然とお力を貸してくださる場所になりました。

スタッフがプロになるより、絵画、自然体験、農体験など、その道のプロに知恵を借りることで、自然と沢山の方々に関わるようになり、輪が広がっていきました。また、地域の方々が茶道を教えてくださったり、給食のお野菜をくださったりと、地域の方々との輪も自然と広がっていきました。

【質問】
お寺の本堂という空間で、子供たちが育まれるわけですが、仏法を伝えるということで、留意していることはありますか?

【優華さん】
子供たちも、スタッフたちも、自然体でということを大切にしています。こちらから答えを与えるのではなく、感じてもらう。全部、体験、体験。寺子こどもえんの1日は、最初は、掃除、お念仏に始まります。木曜日は正信偈をみんなで学びます。

【質問】
一日は、どう過ごしますか?

【優華さん】
絵を描く時は描きたいだけ描くというように、一人一人の子供のやりたい、を尊重する時間の流れを大切にしています。また、晴れた日は外にお散歩に出ます。近くの山に散歩に出かけると、野に咲く花、動物が通った後、イノシシの糞、自然の営みに出会い、子供たちは、自然も、お花も、動物も、みんな自分達と同じ、尊い命なんだと感覚的に受け止めているようです。

【質問】
給食が魅力的だと伺っていますが、どのようなお食事を出していらっしゃいますか?

【優華さん】
野菜やお米も自分たちで作って頂いています。毎日の給食は、調理師さんが作ってくださいます。

給食の時間には、調理師さんも子供と一緒に給食を食べます。そこで、子供たちの生の声が聞けて、子ども達の様子も見られます。調理師さんは化学調味料を使いません。また、アレルギーにも対応しています。食べるもので体はできているからです。

1ヶ月に1回は、子供たちも一緒にクッキングします。そこでは、今日採ってきたナス、鶏の卵などを食材として使います。食材を育む畑や田んぼ、また鶏のお世話も子ども達が行います。その結果、好き嫌いのある子も、徐々に何でも食べれるようになります。

【質問】
寺子を運営する上で、大切に考えていることは?

【優華さん】
三つ子の魂、百までもと言われるように、幼児期は大切です。この時期に、いろんな体験が出来るよう心掛けています。

寺子には、いろんな人が集まります。夏休み小学生も来て、一緒に遊んでもらえます。一人っ子の子には、兄弟ができて、毎回来てたら、友達になります。高校生のボランティア、近所のご年配の方も来て下さり、お茶を教えたり、雑巾を縫ったりします。街で会っても、声を掛けあって、地域の循環が始まります。

食べ物も循環したい。野菜クズ、煮干しは、鶏が食べます。産んでくれた卵を私たちが食べます。生ゴミはコンポストに入れて、堆肥にします。このように、小さな、身近な範囲で循環が始まります。

去年から子ども食堂を始めました。地域の方が、今採れたからと、寺子に野菜を届けてくださいます。お米をもらったりボランティアさんが来てくださったり、父兄の方が休みの日に手伝ってくださったりと、地域の方々がサポーターになってくださいます。このような恵まれた環境で育つ子供たちは、場の力、人の力で、例え、喧嘩、もめごとがあっても、穏やかな感じになります。

こんなエピソードもあります。ある日、建物の中に明るさを求めて、トンボが入ってきたことがありました。そのときは、電気を消し、暗くして、トンボが自然に外に出ていくようにします。「お外に行きたくて困ってるね」と、みんなでトンボさんの心になりました。

「せんなん(しなけれならない)」で、心が苦しくなります。子供たちでも、「せんなん」に苦しみます。大事なのは、命を守ること。虫は、怖い、汚いじゃない。泥も、ばっちいじゃない。触った感触を大切にする。虫や葉っぱも生きている。いろいろ経験、いろんな受け止め方で変わる。仏法もそうだけど、子供たちに感じてもらえたらいい。いろんな人がいて、いろんな感覚がある。それがちょっとずつ広がって、大人になる。「こうでなければならない」ではない世界になる。

(インタビューはここまで)

優華さん、躍動感あふれる、明るい未来を感じる素晴らしいお話をありがとうございました。